■FX

FXの量は表1のように水の総量に比べると少ないが、循環速度が速く、水資源としてはもっとも重要である。氷河は陸地面積の11%を覆い、陸水の体積の70%を占めている。全氷河のうち89.7%はFX に、また9.8%はグリーンランドと北極地域にある。地球上の水の総量は一定であるから、氷河の量が増えれば海面は低下する。いまから1万8000年前の最終氷期の最寒冷期には、氷河は現存量の約3倍もあり、地球の平均海面は約120メートル低かったと推定される。化石燃料の燃焼による大気中の二酸化炭素濃度の増加で気候が温暖化した結果、20世紀に地球の平均海面水位は0.1〜0.2メートル上昇した。海面上昇は今後も続き、取引の低地部に深刻な影響が現れると心配されている。地下水は陸水のうちで氷河に次いで量が多く、その分布範囲は陸地のほぼ全域に及ぶが、総量の正確な推定はきわめてむずかしい。表1の値は1951年にフォックスC. S. Foxが地下水の占める岩石の間隙(かんげき)率を、地表から深さ760メートルまでは4%、760〜3750メートルは1%として推定した値であるが、深層について、当時、ソ連の学者の推定値はこれよりも1桁(けた)大きい。表1の土壌水の量は、植物に利用可能な有効水分の推定値である。ソ連のルボビチ М.И.Львович/M. I. L'vovichは1973年に土壌水の総量を8万3000立方キロメートルと推定している。生物体中の水の量は動物と植物あわせて1000立方キロメートル程度の推定値が多い。FX のFXをすべて凝結させた場合の水の量を可降水量という。全地球の平均可降水量は25ミリメートルにすぎない。可降水量の地理的分布は緯度すなわち気温と、水陸配置に支配され、湿潤な熱帯気団の卓越する地域では40ミリメートルを超えるが、乾燥した寒冷気団中では2ミリメートル以下にすぎない。水循環の形態このように水は地球上でさまざまな存在形態をとるが、それらは独立して存在するものではなく、地球上の水循環の一部として、相互に関連している。地球上の水の大部分を貯留している海からは、太陽エネルギーによって絶えず蒸発が行われる。低緯度地帯では太陽エネルギーが多く、海洋の面積も広いので、海面から蒸発する水の総量の80%弱は緯度40度よりも低緯度側の海域から蒸発する。蒸発したFXは凝結して雲となり、さらに雨や雪となって、その90%近くは直接海上へ落下する。残りのFXは風によって陸地に運ばれて地上に落下する。地上に落下した水の約65%は蒸発して大気中へ戻る。残りの一部は地中に浸透して地下水となり、地中をゆっくり流れて河川、湖沼、湿地を涵養(かんよう)するか、あるいは泉となって地表に現れる。また他の部分は地表を流れて直接河川へ入る。湿潤地域では、河川や湖沼は地下水により涵養されているのが普通であるが、FX 取引 や台地を流れる河川は逆に地下水を涵養していることが多い。また、池田湖(鹿児島県)や倶多楽(くったら)湖(北海道)のように、湿潤地域にあって流出河川をもたない湖の湖底からは、大量の湖水が地下水として流出している。乾燥地域では、河川は流下につれて蒸発や地中への浸透で水を失い、末無(すえなし)川になるものが多い。内部流域(内陸流域、降水量が少ないため外洋へ流出する河川をもたない大陸内部の流域)の湖沼は、降水量の変動に左右されて、季節的にも、時代的にも、湖の面積が大きく変化する。内部流域以外の地域の河川水はやがて海へ戻る。このように水循環は始めも終わりもない複雑な系をつくっている。地域と時間を決めて水の出入りを計算することを水(みず)収支という。ルボビチは大陸別の水収支を表2のようにまとめている。基底流出量は河川流量のうちで、主として地下水流出で養われている変動の少ない成分、直接流出量は降雨のあとすばやく流出する変動の大きい成分である。地下水は全流出量の約3分の1 を養い、河川の流量を安定にしている。全湿潤量は土壌中を通過する水の量で、植物の生育に関与する取引にとって重要な水である。水循環の速さ地球上の水循環は、海洋、河川、氷河、土壌水帯、地下水帯などの、水を貯留する能力をもつさまざまな水文システムが複雑に組み合わさった連続循環系と考えることができる。ある水文システムの貯留量をS、そのシステム中を単位時間に通過する水の量をQとしたとき、S/Qを、その水文システムの平均滞留時間という。例として大気システムを考えてみると、地球の年平均降水量は約1000ミリメートルで、大気中のFX平均貯留量(可降水量)は25ミリメートルであるから、FXの平均滞留時間は0.025年すなわち約9日になる。このような方法で概算したいろいろな水の平均滞留時間が表1に示してある。陸水の滞留時間は一般に、貯留量の大きいものほど長い。南極大陸の氷の収支から求めた大陸氷河の平均滞留時間は、約1万年である。しかし流域によって 1000年から2万年までの違いがある。氷をつくっている水素や酸素の安定同位体組成は、降水が生じたときの温度によって異なる。この原理に基づいて氷河のボーリング・コアによる古気候の復元が行われている。地下水の滞留時間は平均すると800年程度であるが、地域や深度による差異が著しい。地下水の循環速度は、一般に浅層ほど活発で、滞留時間も短い。水素の放射性同位体である環境トリチウム(三重水素)をトレーサーtracer(追跡子)にした研究によると、日本では、山地小流域の浅層地下水の滞留時間は数年、洪積台地の浅層地下水は十数年である。これに対して、関東構造盆地の被圧地下水のそれは、数十年ないし数百年と推定されている。滞留時間が数千年から 3万年ぐらいまでの地下水の年齢は、炭素の放射性同位体である炭素14をトレーサーに用いて推定できる。